序章

 現代の社会では、「部落は穢れていない」と信じるのが常識となっている。しかし、人々は本当に「部落は穢れていない」と信じているのだろうか。そう信じているとすると矛盾する事がたくさんある。

本当は穢れていると信じている?

事故物件

 過去に殺人や自殺などの事件が起きた物件は、安くなる。そこに住みたくないという人が多いのである。しかし、土地の穢れという点では、部落差別と共通する。だから、「部落は穢れていない」と信じているなら、過去に事件が起きた物件にでも平気で住む事ができるはずである。

 だから、過去に事件が起きた物件に住みたくないという人は、タテマエ上「部落は穢れていない」と言うが、本当は「部落は穢れている」と信じている可能性がある。

地鎮祭

 地鎮祭とは、土地を清める儀式である。土地の穢れという思想は、部落差別と共通する。だから、地鎮祭をする時、その土地は穢れていると考えるので、部落だけが特別穢れていないはずがない。ゆえに、地鎮祭をする人は、タテマエ上「部落は穢れていない」と言うが、本当は「部落は穢れている」と信じている可能性がある。部落は穢れていないなら、地鎮祭も必要ない。

事故物件と部落差別の違い

 今後の研究の課題について考える。図書館で、事故物件について書かれた本を読み、人々はなぜ事故物件に住みたくないのかを調べる。部落差別について書かれた本も読み、現代人は、部落は穢れていると信じているか、穢れていないと信じているか、これについて調べる。そして、その2つを比較し、どこがどう違うのかを考える。

 また、フィールドワークという手段もある。

 

(1)事故物件にでも平気で住む事ができますか。それとも、事故物件には住みたくないですか。

(2)部落は穢れていると信じていますか。穢れていないと信じていますか。

(3)事故物件には住みたくないが、部落は穢れていないと信じていると回答した人に質問。事故物件と部落差別の違いは何ですか。

 

 この3つの質問をする。

 

 

前世と占い

 部落差別が盛んだった時代、部落に生まれるのは前世の行いが悪いからであって、差別されて当然であると考え、差別を正当化されていた。では、現代人には、部落に生まれるという事は前世の行いが悪いのであるという考え方はあるのだろうか。

 現代では、占いには前世の行いがセットになる事が多い。

 占いは昔、未来の天気を占ったり、戦争で攻めるか守るかを決めたりする事に使っていた。目的が国家規模だったのである。

 一方現代では、占いの目的が個人的になってきている。本来未来を見るための占いが、過去を当てる事に使われている。

 昔と比べて現代は人間関係が複雑になっているので、11人の事を理解するのは難しい。長い時間をかけて理解する人物像を、1日で理解できる。これが現代における占いブームの理由である。

 昔と現代では、前世に対する認識が異なる。

 血液型占いが人気である。日本はそれぞれの血液型がほぼ均等に存在し、血液型は体の事だから科学的にあり得る。こういう理由である。そして、血液型占いは、前世がからまない事が多い。

 次の課題は、


・現代の占いには前世がからむが、昔の占いにも前世がからんでいたのかどうか。

・現代人で前世がからむ占いを信じる人は、部落に生まれるのは前世の行いが悪いからだと考えているのか。

・もしそうでないなら、占いと部落差別の違いは何か。


という事である。

部落と不動産

2006 『土地差別 部落問題を考える』 奥田均 解放出版社

P43

 部落の土地は安い。

部落である事で物件価格に影響したかどうか。2003年調査。

36.8% 影響した。

17.0% 影響なし。

 36.8%の人が、影響したと回答し、17.0%の人が、影響なしと回答した。

P106,107

 不動産で部落の物件かどうかの問い合わせがあれば答えなければいけないか。2003年調査。

49.6% 答えなければいけない。

13.2% 教えてはいけない。


 不動産は、その物件が部落かどうかを教えてはいけないが、部落の土地は必然的に安くなっていくのである。

 事故物件は、教えなければいけない。システムの上で安くなる。

 部落は、教えてはいけない。建前上安くならないが、実質的に安くなる。

 つまり、堂々と安くなるか、建前上は変わらないが実質的に安くなるかの違いがあるのである。

穢れていないという主張

1995 『人権意識論』 田宮武 明石書店

P9

 大学生の部落差別観という調査報告書を、この本の著者は書いている。

P41,42

 大学生の13.1%が、部落差別に賛成である。この調査では、他に5、合計6のグループにわけて統計をとっている。

 59.1%(16.4%+19.7%+23.0%)の人は、部落差別にはあまり関心がない。

 27.8%(9.8%+18.0%)の人は、部落差別反対、または、部落差別の知識はある。

P146149

 部落は怖い所と親から教えられてきたが、実際にそこの人と付き合うと、ふつうの人と変わらない事に気づいてきたという人もいる。

 建前では部落に対して差別意識はないが、結婚には問題がある。部落との結婚は平気ではないが、それを忘れるほどステキな人ならそれでいい。こういう人もいる。


 部落は穢れていないと信じる人は、なぜそう信じるのか。彼らの中には、部落を差別するように親から教えられてきたが、自分の経験から、部落はふつうの地区と同じだと気付いたという人もいる。


P185

 1992年の調査。部落をどう思うか。(複数回答)

怖い・近寄りにくい 19.4%

汚い 16.0%

貧しい 13.9%

 P4113.1%のように、13%以上の人が、部落を穢れていると考えている。


 では、事故物件の場合、親の教育や本人の経験は、どうなっているのだろうか。部落の人と付き合った経験があり、ふつうの人と変わらない事がわかっても、事故物件に住んだ経験がなければ、ふつうの物件と同じとは思えない。

 次の課題は、事故物件を避ける人、事故物件を避けない人でそれぞれ、親から事故物件に関して何か教育を受けたかどうか、事故物件に住んだ経験はあるのかどうか、という事である。

フィールドワーク

 部落は穢れていないと信じているなら、事故物件に住むのは嫌だと思うのはなぜか。様々なオカルトを信じる中、なぜ部落だけが特別穢れていないと言えるのか。

 2014年調査。

 

 

「事故物件の場合、そこで自殺した人の怨念がある。しかし、穢多・非人は、人間が勝手につくった制度。」(40代・女性)

 

「事故物件に住む事で、そこを事故物件でない物件にする職業もある。部落の人と付き合ってみて、部落の人は普通の人と変わらない事に気づいた人がいるのと同様に、事故物件も、実際に住んで見ると、普通の物件と変わらない。」(30代・男性)

 

「部落は穢れていないと言うのは建前という人もいる。事故物件と部落差別は別のものとして考えるのが一般的。事故部件は事故物件で考え、部落は部落で考える。縦に掘り下げて研究するのが一般的。事故物件と部落、土地の穢れという共通点という、横のつながりを考えないから、事故物件と部落は結びつかない。」(40代・男性)


「占いを信じるのは、人生で迷った時に役に立つから。しかし、部落差別は、生活する上で必要ない。しかし、事故物件は何か嫌。」(20代・女性)

 

 

 現代の社会においては、事故物件や占いは意味のあるものなのである。そして、共通点があっても、生活する上で必要ないものは、別のものとして考えるのである。